センスのあるさいたま市 一戸建て

北米大陸は83年に冬の寒波と夏の熱波に見舞われ、86年には長雨で農作物に大被害が出たと思ったら、87、88、89年は3年続きで干ばつの被害に見舞われるなど、ちぐはぐな天候が続いている。 欧州でも、85、86年と2年続きの寒波襲来で多くの凍死者を出した。
それが、88年は一転して暑い夏となり、89年は異常に暖かい冬となった。 今や、世界中どこを旅行しても異常な気象が話題にならない場所はない。
この異常気象は各国で、その被害以上に住民の心理的なパニックを引き起こした。 これまでもさんざん聞かされてきた二酸化炭素の増大による地球の温暖化や気象の混乱が、いよいよ現実のものになってきたとする不安である。
89年に入っても、日本をはじめとする東アジアやヨーロッパの異常暖冬や、南米の干ばつや南極の異常な高温など狂った気象のペースは変わらなかった。 90年になっても日本国内では11月に全国154カ所の観測地点のうち91カ所で過去最高の平均気温を記録し、米国では3月のワシントンが10度以上の日が3日、10度を超える日が9日間も続いて、サクラが平年よりも10日も早く満開となって、史上でもっとも早い開花の記録をつくる騒ぎとなった。
実は、この気象異変は80年代に入って年々激しくなってきた。 例えば、83〜85年にはアフリカ全域で最悪の干ばつが発生、餓死者は300万人にも達したと推定される。
インド亜大陸では、83年干ばつ、84年洪水、87年干ばつ、88年洪水、89年洪水と交互に大きな被害を出して集中している。 報告されるにつれて、専門家の間では数年来、地球規模の異変が始まったのではないか、とする議論が静かに浸透していった。

世界的に気温の常時測定が開始されたのは、130年ほど前のことだ。 その中で、暑かった年から順に取り出してみると、過去の最高値は1989年で、暑い順からトップ7までが80年以降に世界各地の「異常低温」と「異常高温」の発生数を調べてみると、50〜70年代には「異常低温」が「異常高温」を上回っていたが、80年代に入って、オセアニアを除いて全世界的に「異常高温」が「異常低温」よりも増えてきた。
これを裏書きするように、世界の気温の変化を遡ってみると、1950年代から低下傾向にあったのが、60年代後半から再び上昇に転じ、65〜85年の上昇は0・6度にもなる。 過去の気温をさまざまな間接的な手法で再現する古気象学のデータからみると、0・6度程度の気温の変化には数百年かかっている。
それが、わずか10年ほどで変わってしまったことになる。 これは、南極の氷に閉じ込められた太古の空気の分析からもはっきりする。
南極では降った雪が解けないので、降った時の空気を取り込んだまま積もっていく。 ソ連の研究者グループは、南極のポストーク基地で10年がかりで過去16万年分の氷雪層をボーリングして、フランスのグルノーブルにある「氷河・物理研究所」が各層ごとに閉じ込められている空気を分析した。
その結果、地球の暑い時期は大気中のニ酸化炭素濃度も高く、寒かった氷河期には低かったことがくっきりと浮かび上がってきた。 さらに、温暖化で気温が上がると、海から放出されるニ酸化炭素が増えて、それがまた温暖化を促進することも分かつてきた。
歴史時代に入って平均気温がもっとも高かったとされる6000年前ごろでも、今よりも平均気温で一度前後しか高くなかった。 一方で、今よりも一度ほど低かったに過ぎない17〜19世紀の「小氷期」には、日本では悲惨な天明・天保の大飢鐘が起き、ヨーロッパでも凶作が続いて新大陸への大量移住が始まった。
わずかな気温の変化によって、私たちの生活は大きく左右されているのだ。 気象の変化は、これまで太陽の活動や火山の爆発、南東太平洋の海水温度が上昇するエルニーニョなどで説明されてきたが、いずれも最近の事象の説明には無理があり、こんな急激な変動は人間活動以外に考えられない、とする専門家が多くなってきた。
さらに不安をかき立てているのは、異常気象に見舞われた地域が、将来に温暖化が始まったときに予想される各地の気象の変化と奇妙に重なっていることだ。 温暖化によって、どう気象が影響を受けるかについては、各国で盛んにシミュレーションが行われているが、一般的には、世界の気候帯が全体的に北に押し上げられる、とされる。

つまり、米国中西部の穀倉地帯の気候はカナダまで北上して、カナダ西部が農業地帯に生まれ変わる代わりに、米国は世界一の農産物輸出国の座を滑り落ちることになるだろう。 アフリカから中東、インドの乾燥地帯は湿潤な気候に変わり、サハラ砂漠も8000年ほど前の森林や草原で覆われた「緑のサハラ」の時代に戻って、慢性的な干ばつや飢餓からは解放されるかもしれない。
その温暖化が、化石燃料の大量消費によって大気中に増える二酸化炭素によって起こることは、かなり以前から知られていた。 最初にその説を唱えたのは、スウェーデンのノーベル化学賞の受賞者S・Aで、1896年のことだ。
日本でも、すでに1910年代に知られていたことは、宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』にこの話が登場することでもうかがわれる。 その第9章で、登場人物のブドリとクーポー博士にこんな会話を語らせている。
「先生、気層のなかの炭酸瓦斯が殖えてくれば暖かくなるのですか」「それはなるだろう。 地球ができてからいままでの気温は、大抵空気中の炭酸瓦斯の量できまっていたと云われる位だからね」。
大気中の二酸化炭素の濃度は、1958年のハワイのマウナロァ山観測所を皮切りに、南極、北極など世界各地で測定が開始されている。 その結果、エネルギーの大量消費の始まる産業革命前には、大気中に一170ppmほどだった濃度が刻々と増え続けて、この観測所で測定が開始された年には313ppm、そして87年はついに350ppmを超えた。

その上げ幅は年々ピッチが上がっている。 代償として、地中海沿岸は乾燥が強まる。
一方、ソ連は乾燥が強まって農業不振はいよいよ深刻化するかもしれない。 大気中の二酸化炭素にはちょうど温室のガラスのように、太陽光線の光は通すが熱は逃がさない働きがあり、それが増えると地球を温めることになる。
この「温室効果」による地球温暖化については各国、各研究機関で競ってシミュレーションが行われている。 その中でも、信頼性の高い米国科学アカデミーの専門家委員会(1979、81、83年)の検討によると、大気中の二酸化炭素が現在のニ倍になると、全地球平均気温の上昇は「3度プラスマイナス1.5度」、つまり1.5〜4・5度の幅で上昇するという。
一方、国連環境計画(UNEP)・世界気象機関(WMO)・国際学術連合会議(ICSU)の合同委員会(85年)は「3・5度プラスマイナス2度」と評価している。 北極や南極に近い高緯度地方は、それ以上に気温が上がる可能性が高い。
温度の上昇に伴って氷が解けて開氷面が広がってくるためだ。 氷や雪だと太陽光線を70パーセントぐらいは反射するが、水面だと5パーセントほどしか反射しない。
つまり、それだけ水面の方が温度が上がるわけだ。 この二酸化炭素濃度が2倍になるのは、70年代の予測では111世紀半ばだった。

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